産経新聞 2005年01月29日 夕刊 (要約)

氷結の間宮海峡
電気自動車で横断に挑戦
極寒冷地を10km「エンジニアの夢」乗せて
姫路の部品会社など

自然の恵み(風力と太陽光)から造った電気だけでEV(電気自動車)を走らせ、厳冬期のロシア・サハリン州の間宮海峡(タタール海峡)を横断しようという試みが、兵庫県姫路市の4WD部品製造販売会社などでつくるプロジェクトチームで取り組まれている。
アタック用車両は既に神戸港からサハリンに向けてコンテナ船で運ばれている途中で、飛行機で現地入りするプロジェクトメンバーと合流した後、予定通り行けば2005年の2月27日にアタックする予定となっている。
関係者は「おっさんのロマンとくるま社会への問題提起を体言するチャレンジ。必ず成功させたい」と意気込む。

この計画は、同市豊富町で四輪駆動車のパーツなどを製造・販売している「タニグチ」と自動車環境問題のNGO「ZEVEX」が共同で進めているプロジェクト。
マシンは市販の四輪駆動車(スズキジムニー)をベースにして約1年間をかけて製作した。
風力発電と太陽光発電(共にゼファー社製)で得られた電力だけで走る電気自動車で今回の冒険に挑戦する。

挑戦の目的は、循環型エネルギーだけで21世紀のくるま社会が成立するかどうか、の可能性の検証。
及び最終目標とする南極大陸走破への技術水準の確認である。

間宮海峡は毎年1月〜3月にかけては氷結して上を渡れるようになるが、4月になれば氷が融け、結果「轍」さえ残さない究極の低環境負荷な冒険が可能になることでこの場所を選んだ。

今回の冒険では、サハリン(樺太)側からユーラシア大陸側へ向けての約10kmを走破する予定。
距離は短いが、この時期の平均気温は氷点下35度前後で、車にとってもドライバーにとっても条件は厳しい。

このため、発電した電力はメーカー(ENAX)の協力を得て最先端の特注大型リチウムイオン電池に蓄え、制御系の電子部品といっしょに助手席部分に設置した保温ケースに収納して冷気から護る。
また、ボディーはFRP製として軽量化を図り、横断中氷を割る可能性が極力低くなるように工夫を重ねた。

考えられ得る限りの準備は施したが、谷口さんは「それでも、前例が無いだけに現場では何が起こるかわからない」と、気を引き締める一方、「こんな時代だからこそ、技術者のはしくれとして夢もみたい」と、アタックの日を待ちわびている。

<要約、加筆文責 鈴木一史>


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